押さえつけ、ついて回り…「声届けたかっただけ」ヤジ排除は適法か

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平岡春人
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 2019年の参院選で、札幌市で街頭演説中の安倍晋三前首相にヤジを飛ばした男性(33)と女性(26)が北海道警の警察官に取り押さえられ排除された問題で、2人が憲法が保障する「表現の自由」を侵害されたとして道に慰謝料などを求めた訴訟の弁論が9、10日、札幌地裁であった。排除に関わった警察官3人と、目撃者2人、原告2人の尋問があり、排除の適法性についての原告と道側の対立が改めて鮮明になった。

 10日にあった目撃者2人の証人尋問は、原告側が申請した。

 原告男性の友人で当日行動をともにしていた女性(29)は「とっさに、(男性が)警察官たちに無理やり連れて行かれた。周囲に彼をにらんだり、怒鳴ったりする人はおらず、危険な事態が生じるような状況ではなかった」と証言。「警察官らは警告もせず、いきなりつかまえて移動させた」とも話した。

 当日たまたま居合わせたという女性(65)は、原告の女性が排除される場面について「女性をにらむ人はおらず、トラブルは起こりそうになかった。複数の警察官が女性の両腕をつかみ手足を密着させ、連行しているかのようだった」と述べた。

 10日には原告2人の尋問もあった。

 原告の男性は当時、現場にいた警察官らに排除の法的根拠を尋ねたところ、「他の人や演説の迷惑」「選挙の自由を妨害してはいけない」などと説明を受けたと話した。「正当な理由がないと感じ、何様だと思った」と振り返った。自身の行動については「批判の声を安倍前総理に届けることだけが目的で、違法行為をするつもりはなかった」と主張した。

 警察官がついて回る中で突然走り出したことについて、道側の弁護士に「誰が見ても危ないと感じるのでは」と問われると、「非常識だと思う人はいるかもしれない」と答えた。

 原告の女性は「増税反対」とヤジを飛ばしてから10秒ほどで、複数の警察官に囲まれ移動させられたと述べた。「法的根拠を示さずに排除され、これからも批判的な意見を上げたらこんな目に遭うと思うと不安だ」と語った。

 今回の訴訟は、警察官らによる原告の排除が、警察官職務執行法の範囲内の対応かどうかが最大の争点だ。

 同法4条は、危険な事態があ…

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